横浜市は「坂の街」とも呼ばれ、保土ケ谷区・南区・磯子区・神奈川区などの丘陵地には、斜面や擁壁に面した住宅地が数多くあります。こうした土地を相続した場合、路線価をそのまま当てはめるだけでは、実際の使いにくさが評価に反映されず、相続税を払いすぎてしまうことがあります。本記事では、横浜の土地で特に見落とされやすいがけ地補正と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)補正を中心に、評価額を適正に下げるためのポイントを税理士が解説します。

路線価だけでは斜面の「使えなさ」が反映されない

市街地の宅地は、原則として道路に付された路線価に面積を掛け、奥行や間口、形状に応じた補正を加えて評価します。路線価は、その道路に面する標準的な宅地を想定した価格です。そのため、敷地の一部が急な斜面になっていて建物を建てられない、道路から階段で上がらなければならない、といった個別の事情は、路線価自体にはほとんど織り込まれていません。

財産評価基本通達では、こうした個別事情を評価に反映させるための補正がいくつも用意されています。ところが、補正は申告する側が自ら適用しなければ反映されません。税務署が「この土地は斜面があるので減額しましょう」と教えてくれることはないため、現地確認をせずに机上だけで評価すると、減額の機会を逃してしまいます。

がけ地補正率|斜面の割合と向きで最大47%の減額

敷地の中に、平坦地に比べて著しく利用価値が低い斜面(がけ地)がある場合は、「がけ地等を有する宅地」として評価を下げることができます。補正率は、敷地全体に占めるがけ地部分の割合と、がけ地の向き(方位)によって決まります。

がけ地の割合南向き東向き西向き北向き
10%以上0.960.950.940.93
30%以上0.880.870.860.83
50%以上0.820.810.780.73
90%以上0.700.650.600.53

北向きのがけ地ほど日当たりが悪く利用しにくいため、補正率が低く(減額が大きく)設定されています。がけ地の割合が大きい北向きの土地では、評価額がほぼ半分になることもあります。なお、がけ地の面積や向きは、公図や登記情報だけでは分かりません。測量図や現地での計測をもとに斜面の範囲を特定することが、正しい補正の前提になります。

横浜で特に確認したい「レッドゾーン補正」

神奈川県では、土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)の指定が進み、横浜市内でも多くの住宅地が区域内に含まれています。レッドゾーン内の宅地は、建築に構造上の規制がかかるため、2019年1月以降の相続から、区域内の面積割合に応じた特別警戒区域補正率を適用できるようになりました。

  • 区域内の面積割合 10%以上:0.90
  • 区域内の面積割合 40%以上:0.80
  • 区域内の面積割合 70%以上:0.70

この補正は、がけ地補正と重ねて適用できます(両方の補正率を掛け合わせ、下限は0.50)。斜面地に建つ住宅は、がけ地であると同時にレッドゾーンに指定されていることが多いため、両方の補正を検討するだけで評価額が3〜5割下がるケースもあります。区域の指定状況は、神奈川県の「土砂災害情報ポータル」などで地番ごとに確認できます。

補正だけで足りないときの選択肢

道路との高低差が大きく、階段でしか出入りできない土地や、老朽化した擁壁の造り直しが必要な土地は、補正を適用しても実際の取引価格より評価額が高く残ることがあります。この場合は、付近の宅地に比べて著しく利用価値が低いとして10%の評価減を検討できる場合があるほか、不動産鑑定士による鑑定評価額で申告する方法もあります。

ただし、鑑定評価で申告する場合は、通達による評価より低いことの合理的な根拠が求められ、税務調査で争点になりやすい点に注意が必要です。どの方法が最も有利で、かつ説明がつくかは、現地の状況と資料をもとに判断することになります。

横浜の斜面地の評価で、私たちが申告前に必ず確認している資料は次のとおりです。

  • 地積測量図・建物図面(がけ地部分の面積と向きを特定するため)
  • 神奈川県の土砂災害情報ポータルでの区域指定の状況
  • 擁壁の築造時期や検査済証の有無(造り直しの必要性を判断するため)
  • 現地写真と、道路との高低差の計測結果

これらの資料は、申告書に添付して補正の根拠を示す役割も果たします。根拠が明確であれば、税務調査で補正の適用を否認されるリスクも小さくなります。また、面積が500㎡以上ある広い土地では、「地積規模の大きな宅地」の評価と組み合わせられる場合もあるため、あわせて検討しましょう。

まとめ

横浜の斜面地や擁壁のある土地は、路線価をそのまま使うと相続税を払いすぎる可能性があります。がけ地補正は斜面の割合と向きで決まり、北向きで割合が大きいほど減額幅が大きくなります。さらにレッドゾーン内の宅地は特別警戒区域補正を重ねて適用できます。いずれも申告する側が現地を確認し、根拠資料をそろえて初めて適用できる補正です。相続した土地の評価に不安がある方は、相続税申告サービスをご利用ください。

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