賃貸アパートの一室や実家で自殺・事件があった、いわゆる「事故物件」を相続した場合、「価値が下がっているのだから相続税も安くなるはず」と考える方は少なくありません。しかし相続税の評価では、事故物件だからといって自動的に評価額が下がるわけではありません。単身者向け賃貸の多い横浜市内では実務上のご相談も多いテーマです。減額が認められる条件と、実務で押さえるべき点を税理士が解説します。

事故物件でも相続税評価額は自動的には下がらない

相続税の土地・建物の評価は財産評価基本通達に沿って行います。土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額を基礎とします。この通達には「事故物件は◯%減額する」という規定は存在しません。市場価格は売主と買主の合意で決まるため心理的瑕疵が直接反映されますが、相続税評価額はあくまで課税のための画一的な基準額であり、両者は別の物差しです。したがって「事故物件だから当然に評価減できる」という理解は誤りで、何も手当てをせずに通達どおり評価すれば、周辺の何もない物件と同じ評価額になります。

減額が認められるために越えるべき3つのハードル

実務では10%程度の評価減が認められた例もあれば、否認された例もあります。分かれ目は次の3点です。①取引価格への影響を具体的に示せるか:近隣の成約事例、仲介業者の査定書、事故後の賃料の下落実績など、抽象的な「売れにくい」ではなく数字で示す必要があります。②その影響が路線価にすでに織り込まれていないか:周辺一帯に共通する事情であれば路線価に反映済みと判断され、重ねての減額は認められません。あくまで当該物件固有の事情である必要があります。③通達によらない評価を用いる合理的理由を説明できるか:不動産鑑定評価を用いる場合、なぜ通達評価が実態と乖離するのかを説明できなければなりません。いずれも、減額を主張する側に立証の負担があると考えておくべきです。

賃貸物件で起きた場合は「空室」も論点になる

事故が賃貸アパートの一室で起きた場合、論点は評価減だけではありません。貸家建付地・貸家としての評価は、課税時期に賃貸されていることが前提です。事故後に空室が続いていると、その部屋は賃貸割合の計算から外れ、かえって評価額が上がることがあります。「事故で価値が下がったのに相続税評価は上がった」という逆転が起きるのはこのためです。相続開始時点の入居状況、募集を継続していたか、一時的な空室と評価できるかを、賃貸借契約書・募集広告・管理会社の記録で残しておくことが重要になります。

横浜で単身者向け賃貸を相続する人が確認すべきこと

横浜市内、とくに西区・南区・中区などでは単身者向けのワンルームやアパートが多く、孤独死を含む「告知事項あり」の物件は珍しくありません。国土交通省のガイドラインでは、自然死や日常生活の中での不慮の死は原則として告知不要とされており、事故物件かどうかの線引き自体が一律ではありません。相続税の評価でも、事件性の有無・経過期間・原状回復の状況によって説得力が変わります。相続が発生したら、まず①いつ・何があったか、②その後の入居状況と賃料の推移、③原状回復やリフォームの内容を時系列で整理しておくことをおすすめします。この記録があるかどうかで、評価の選択肢が大きく変わります。

相続した後、売却・賃貸継続・解体のどれを選ぶか

評価の話とあわせて検討したいのが、相続後の出口です。売却する場合、譲渡所得の計算では被相続人の取得費と取得時期を引き継ぎます。事故物件は相場より安く売らざるを得ないことが多いため、結果として譲渡益も小さくなり、譲渡所得税の負担は軽くなる傾向があります。ただし売主には告知義務があり、告知しないまま売却すると契約不適合責任を問われるおそれがあるため、価格に織り込んで正直に開示するのが実務上の原則です。

賃貸を継続する場合、特殊清掃やリフォームの費用は不動産所得の必要経費になります。原状回復を超える改良部分は資本的支出として減価償却の対象になるため、見積書の内訳を工事内容ごとに分けてもらうと処理が明確になります。解体して更地にする場合は、住宅用地の特例が外れて固定資産税・都市計画税が上がる点に注意が必要です。相続税の評価だけで判断せず、売却時期・保有コスト・所得税まで含めて比較することをおすすめします。

まとめ

事故物件を相続しても、相続税評価額が自動的に下がることはありません。減額を認めてもらうには、取引価格への影響を具体的な資料で示し、その事情が路線価に織り込まれていないことを説明する必要があります。賃貸物件では空室によって評価が上がる逆転現象にも注意が必要です。判断に迷う場合は、鑑定評価を含めた検討が有効です。相続財産に事故物件が含まれる場合の評価・申告は、相続税申告サービスへご相談ください。

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