合同会社は設立費用が安く、一人で会社を持つ形として選ばれることが増えています。一方で「合同会社は経費の範囲が株式会社と違うのか」「代表社員の報酬はどう扱うのか」といったご質問をよく受けます。結論から言えば経費の範囲自体は株式会社と同じですが、報酬の決め方と証拠書類の残し方には合同会社特有の注意点があります。
経費にできる範囲は株式会社と同じ
法人税法上、損金にできるかどうかは事業との関連性があるかで判断されます。この基準に会社形態による違いはなく、合同会社だから経費が狭い・広いということはありません。事業に必要な仕入・外注費・家賃・通信費・広告費・旅費・書籍代などは当然に経費になります。逆に、代表社員個人の私的な飲食費、家族旅行、趣味の物品購入は、合同会社であっても損金にはなりません。車両を業務用に購入した場合は原則として減価償却で耐用年数にわたって費用化し、取得価額30万円未満であれば少額減価償却資産の特例により一括で費用処理できる場合があります。
違いが出るのは「役員報酬の決め方と証拠書類」
合同会社では、出資者である社員が原則として経営も担い、業務執行社員・代表社員に支払う報酬は税法上株式会社の取締役と同じ「役員給与」として扱われます。したがって損金にするには定期同額給与のルールを守る必要があり、期の途中で自由に増額すると、増額部分が損金として認められないおそれがあります。ここで実務上の落とし穴になるのが証拠書類です。株式会社であれば株主総会議事録で報酬額を決議しますが、合同会社には株主総会がありません。定款の定め、または社員全員の同意書・決定書として書面を残しておく必要があります。書面がないまま毎月一定額を支払っていると、金額の根拠を説明できず、調査で指摘を受ける原因になります。
一人代表がグレーになりやすい5項目
①自宅兼事務所の家賃:会社が個人から借りる形にして、床面積や使用実態で按分します。按分根拠のメモと賃貸借契約書が必要です。②自家用車:業務使用割合の按分が必要で、走行記録がないと全額否認されることがあります。③スマートフォン・通信費:業務専用の回線にするのが最も安全です。④飲食代:相手先・目的・人数を領収書に記録します。記録がないものは交際費どころか経費性自体を疑われます。⑤生命保険:契約形態によって損金算入割合が異なり、全額損金になるとは限りません。いずれも「事業に必要である理由を第三者に説明できるか」が判断軸になります。
過大報酬と私的支出の混同に注意
定期同額給与の形式を守っていても、金額が事業規模や職務内容に照らして明らかに過大であれば、過大部分は損金になりません。一人会社では「利益が出そうだから報酬を上げる」という発想になりがちですが、期首から3か月以内という改定時期の制約もあります。また、法人と個人の財布が近いため、会社の口座から私的支出を出してしまうと、それは経費ではなく役員貸付金または役員賞与として扱われ、後者の場合は損金不算入かつ源泉徴収漏れという二重の不利益が生じます。設立直後から、法人カードと個人カードを分けておくことをおすすめします。
利益が出てきたら検討したい社宅と出張旅費規程
事業が軌道に乗ってきた合同会社で効果が大きいのが、役員社宅と出張旅費規程です。役員社宅は、会社が賃貸借契約を結んで代表社員に貸し付ける形にし、税法上の計算式で求めた賃貸料相当額を本人から徴収すれば、家賃の相当部分を会社の経費にできます。自宅を個人名義で借りたまま按分するより、会社契約に切り替えた方が経費にできる範囲は広くなります。ただし契約名義の変更が前提であり、既存の個人契約のままでは適用できません。
出張旅費規程は、実費精算ではなく規程に基づく日当を支給する仕組みです。適正な金額の範囲であれば、会社は全額を損金にでき、受け取る個人側は所得税が非課税になります。合同会社でも整備できますが、規程の制定は業務執行社員の決定事項にあたるため、社員の同意書や決定書として書面を残しておく必要があります。金額の妥当性を説明できるよう、同規模の他社水準を参考にし、役職ごとの区分と支給要件を明記しておくことが実務上のポイントです。
いずれの制度も、規程や契約書といった書面が整っていて初めて効果が出るという共通点があります。合同会社は設立も運営も手続きが簡素なぶん、書面を残す習慣がないまま運営されているケースが目立ちます。日当を払っていても規程がない、社宅の家賃を会社が負担していても契約が個人名義のまま、という状態では、いずれも経費性を否認されかねません。制度を導入する前に、まず書面の整備から着手してください。
まとめ
合同会社でも経費の範囲は株式会社と変わらず、事業関連性の有無で判断されます。違いが出るのは役員報酬の決め方で、株主総会に代わる社員の同意書など書面の整備が欠かせません。自宅家賃・車・通信費などの按分は根拠資料をセットで残すことが前提です。合同会社の経理・申告・役員報酬設計は、税務顧問・税務申告サービスへご相談ください。



