「うちのような小さな会社にも税務調査は来るのか」「個人事業主でも調査の対象になるのか」。顧問先や相談者の方から、よくいただく質問です。税務調査は、全事業者のうち毎年ごく一部にしか行われません。一方で、調査が入りやすい事業者には共通する特徴があり、平均の確率だけを見て安心するのは危険です。本記事では、税理士法人横浜キャピタル税務事務所が、税務調査が来る確率の目安、選ばれやすい事業者の特徴、調査になった場合の負担、そして今日からできる備え方を整理して解説します。
結論:税務調査の確率は「平均は低いが、条件次第で大きく上がる」
国税庁が毎年公表している調査実績と、法人数・申告者数を比べると、実地調査を受ける割合は法人で毎年数%程度、個人事業者ではそれより低い水準にとどまります。単純に割り算すれば「数十年に1回」という計算になり、「うちには来ない」と感じる方が多いのも無理はありません。
しかし、税務署は事業者を無作為に選んでいるわけではありません。申告書の数字、過去の申告の推移、同業者との比較、取引先の調査で得た情報、金融機関の資料など、手元にある情報から「申告内容に誤りがありそうな先」を優先して選びます。そのため、平均の確率は低くても、特定の条件に当てはまる事業者には、数年おきに調査が入ることも珍しくありません。確率を考えるときは、「平均値」ではなく「自社が選ばれやすい条件に当てはまっていないか」を確認することが大切です。
法人と個人事業主の違い
一般に、法人は個人事業者より調査の割合が高い傾向があります。法人は取引規模が大きく、1件あたりの申告漏れの金額も大きくなりやすいためです。また、法人の調査では法人税だけでなく、消費税や源泉所得税(役員や従業員への給与、外注先への報酬)もあわせて確認されるのが通常です。個人事業主の場合は、所得税と消費税が中心になります。
「実地調査」以外の接触もある
上記の割合は、調査官が事業所や自宅を訪れる「実地調査」の件数をもとにしたものです。実際には、税務署から電話や文書で申告内容の確認を求められたり、資料の提出を依頼されたりする「簡易な接触」も多く行われています。こうした連絡も、回答の内容によっては修正申告を求められたり、実地調査に移行したりすることがあります。郵便物や電話を放置せず、内容がわからない場合は早めに税理士へ相談してください。
税務調査の対象に選ばれやすい事業者の特徴
税務署がどのような基準で調査先を選んでいるかは公表されていません。ただし、実務上「調査が入りやすい」とされる特徴はある程度共通しています。主なものを表にまとめました。
| 特徴 | 税務署が気にする理由 | 確認されやすいポイント |
|---|---|---|
| 売上が急に伸びた | 申告や経理の体制が事業規模に追いついていない可能性がある | 売上の計上漏れ、期ズレ、外注費の急増 |
| 売上が1,000万円前後で毎年止まっている | 消費税の免税ラインを意識した売上除外が疑われる | 入金記録と売上帳の一致、現金売上 |
| 利益率が同業者より極端に低い | 経費の水増しや売上の除外が疑われる | 原価・外注費・交際費の中身 |
| 現金取引が多い業種 | 売上の把握が難しく、除外が起きやすい | レジ記録、日報、通帳への入金状況 |
| 長期間調査を受けていない | 過去の申告が確認されていない | 全般的な確認 |
| 過去の調査で指摘を受けた | 同じ誤りが続いていないかの確認 | 前回指摘事項の改善状況 |
| 多額の還付申告をした | 消費税などの還付が正しいかの確認 | 設備投資や輸出取引の裏付け |
このほか、取引先が調査を受けた際に自社との取引内容が確認され、その情報をきっかけに自社に調査が入ることもあります(いわゆる反面調査からの波及)。自社の申告が正しくても、取引先との書類のやり取りが曖昧だと説明に手間取ることがあるため、契約書や請求書をきちんと残しておくことが重要です。
調査で誤りが見つかった場合の負担
税務調査で申告漏れが見つかると、不足していた本税に加えて、加算税と延滞税がかかります。基本的な仕組みは次のとおりです。
| 種類 | 内容 | 割合の目安 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内に申告したが税額が少なかった場合 | 増差税額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%) |
| 過少申告加算税(調査通知後〜更正の予知前の修正申告) | 事前通知を受けた後、調査で指摘される前に自主的に修正した場合 | 5%(上記の超える部分は10%) |
| 無申告加算税 | 期限内に申告しなかった場合 | 原則15%(一定額を超える部分は加重) |
| 重加算税 | 売上除外や書類の改ざんなど、仮装・隠蔽があった場合 | 過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40% |
| 延滞税 | 本来の納期限から納付日までの利息に相当するもの | 年ごとに定められる割合で日割り計算 |
なお、事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりません。また、税務調査で確認される期間は原則として過去3年分が一般的ですが、誤りの内容によっては5年分、偽りその他不正の行為がある場合は7年分まで遡ることがあります。複数年分の本税・加算税・延滞税がまとめて発生すると、資金繰りへの影響は小さくありません。
よくある誤解と注意点
「赤字だから調査は来ない」は誤り
赤字の会社でも調査は行われます。法人税が発生していなくても、消費税や源泉所得税の誤りが見つかれば追加の納税が生じますし、繰越欠損金の金額が修正されれば、翌期以降の法人税に影響します。
「小規模だから細かく見られない」も誤り
小規模事業者ほど、社長個人の支出と会社の経費の区別が曖昧になりがちです。私的な飲食費や家族旅行、自宅の費用などが経費に混ざっていないかは、規模にかかわらず確認されます。
「調査で指摘されたら素直に全部認めるしかない」わけではない
調査官の指摘がすべて正しいとは限りません。事実関係や解釈に争いがある場合は、根拠となる資料を示して説明することで、指摘が見直されることもあります。ただし、根拠のない反論は調査を長引かせるだけなので、どこまで主張するかは税理士と相談して判断するのが現実的です。
今日からできる税務調査への備え(チェックリスト)
調査が「来るか来ないか」はコントロールできませんが、「来ても困らない状態」は日頃の準備でつくれます。次の項目を確認してみてください。
- 帳簿・書類の保存:帳簿や領収書、請求書、契約書を原則7年間保存しているか(法人で欠損金が生じた事業年度は10年間)
- 電子取引データの保存:メールやWebで受け取った請求書・領収書を、電子帳簿保存法のルールに沿ってデータのまま保存しているか
- 売上の把握:売上帳・請求書・通帳の入金が一致しているか。現金売上は日々の記録を残しているか
- 経費の説明:交際費や会議費について、相手先・人数・目的をメモしているか
- 公私の区別:事業用と個人用の口座・カードを分けているか。家事按分の根拠を説明できるか
- 役員・家族への支払い:役員報酬の決議書や、家族従業員の勤務実態を示す資料があるか
- 外注費と給与の区分:外注先との契約書や請求書があり、雇用と区別できる実態になっているか
- 前回指摘事項の改善:過去に調査を受けた場合、同じ誤りが残っていないか
実際に事前通知を受けた後の準備や、調査当日の進み方については、税務調査当日の流れと対応のポイントで詳しく解説しています。
顧問税理士の有無で何が変わるか
日頃から税理士が帳簿や申告書を確認していれば、誤りが申告前に修正され、調査で指摘される項目自体が少なくなります。調査になった場合も、税理士が事前通知の窓口となり、日程調整や当日の立会い、指摘事項への説明を行えます。顧問税理士がいる場合といない場合の具体的な違いは、税務調査で顧問税理士がいる場合といない場合の違いをご覧ください。
よくある質問
Q. 開業して何年目くらいに税務調査が来やすいですか?
A. 決まった年数はありません。ただ、開業から数年が経って申告の実績が積み重なり、売上が一定規模に達した頃に調査が入ることが多いと言われています。開業直後から帳簿と書類を整えておけば、時期を気にする必要はなくなります。
Q. 税務調査は必ず事前に連絡がありますか?
A. 原則として、調査の開始日時や対象となる税目・期間などが事前に通知されます。ただし、現金商売などで事前に知らせると正確な事実の把握が難しいと判断される場合には、事前通知なしで調査が行われることもあります。
Q. 過去の申告に誤りを見つけた場合はどうすればよいですか?
A. 税額が少なかった場合は、調査の通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません(延滞税はかかります)。税額が多すぎた場合は、原則として法定申告期限から5年以内であれば更正の請求ができます。
Q. 調査の立会いや修正申告だけを依頼することはできますか?
A. 当事務所では、顧問契約のない方からの税務調査対応のご依頼もお受けしています。税務調査の立会いは1日77,000円(税込)、修正申告は1事業年度あたり個人110,000円・法人165,000円(税込)です。詳しくは料金案内をご確認ください。
まとめ
税務調査を受ける確率は、平均すれば法人で毎年数%程度と高くはありません。しかし、売上の急増、免税ライン付近での売上の停滞、低い利益率、現金取引の多さなど、選ばれやすい条件に当てはまる場合は、確率は平均よりも高くなると考えておくべきです。大切なのは、確率を気にすることではなく、帳簿と書類を整え、いつ調査が来ても説明できる状態を保つことです。
税理士法人横浜キャピタル税務事務所は、横浜市西区浅間町(横浜駅徒歩圏)にあり、弁護士法人横浜キャピタル法律事務所と同一グループの事務所です。日頃の税務顧問から税務調査の立会い、修正申告まで対応しており、ご相談は対面のほか、Zoomなどのオンラインでも承っています。相談料は料金案内ページをご覧ください。



