グループ法人税制は、平成22年(2010年)の税制改正で導入された制度です。親子会社や兄弟会社など完全支配関係にある法人間の取引に、通常とは異なる特別な税務処理が強制的に適用されます。中小企業でも親族間での株式保有により適用される場合があり、知らずに申告ミスをするリスクがあります。税理士法人横浜キャピタルがわかりやすく解説します。
グループ法人税制の基本概念
グループ法人税制とは、完全支配関係にある法人間の取引において、以下の特例を強制適用する制度です。
- 譲渡損益の繰り延べ:グループ内で資産を譲渡した場合、譲渡損益を一時的に繰り延べる
- 寄附金・受取配当等の損金不算入:グループ内の寄附金は全額損金不算入、受取配当金は全額益金不算入
- 中小企業の特典の一部排除:グループ内の各法人単独では受けられる法人税の軽減税率(年800万円以下の部分に適用される15%)が制限される
重要なのは、この制度は「選択制」ではなく「強制適用」である点です。完全支配関係があると判定されれば、当事者の意思に関係なく適用されます。
完全支配関係の判定方法
完全支配関係とは、一の者(個人または法人)が他の法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有している関係、またはそうした法人相互間の関係をいいます。
法人による支配の場合:A社がB社の株式100%を保有し、B社がC社の株式100%を保有している場合、A社・B社・C社はすべて完全支配関係にあります。直接保有だけでなく間接保有も含めて判定します。
個人による支配の場合:個人が複数の法人を100%支配している場合、それらの法人は完全支配関係にあります。さらに、その個人の配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族の保有株式も合算して判定します。このため、夫が甲社・妻が乙社をそれぞれ100%保有している場合も完全支配関係が生じます。
例外:従業員持株会の取り扱い:従業員持株会が5%未満の株式を保有している場合は、その分を除外して完全支配関係を判定できます。
グループ法人税制の主な特例の内容
譲渡損益の調整:グループ内で一定の資産(土地・建物・有価証券・金銭債権など)を時価で譲渡した場合、譲渡損益はいったん繰り延べられ、その資産がグループ外に移転した時点で認識されます。これにより、グループ内での恣意的な損益調整ができない仕組みになっています。
寄附金の取り扱い:グループ内の法人から行った寄附金は全額損金不算入となり、受け取った側は全額益金不算入となります。片方だけが損金算入されるという従来の問題が解消されました。
中小企業の軽減税率の制限:通常、年800万円以下の所得に対して法人税率15%(本則税率23.2%)が適用されますが、グループ全体の資本金等の額が5億円以上の法人の完全支配関係にある小規模法人には、この軽減税率が適用されません。
中小企業が見落としやすいグループ法人税制の落とし穴
大企業向けの制度と誤解されがちですが、中小企業でも以下のケースで適用されることがあります。
ケース1:親族間での複数法人経営:横浜市内で複数の不動産賃貸法人を設立するオーナーは少なくありません。例えば、夫婦でそれぞれ100%保有する不動産会社を持っている場合、グループ法人税制が適用される可能性があります。法人間で不動産を取引する際に想定外の税務処理が必要になることがあります。
ケース2:子会社への債権放棄:グループ内で子会社が赤字になり、親会社が債権を放棄した場合、通常の寄附金扱いとは異なる処理が必要になります。損金算入できると思っていたら全額損金不算入になるケースがあります。
ケース3:低額譲渡:グループ内で時価より低い価格で資産を譲渡した場合も、時価で取引したものとして課税される場合があります。
これらの落とし穴を避けるためには、グループ内取引を行う前に必ず税理士に相談することをお勧めします。
まとめ
グループ法人税制は、完全支配関係にある法人間の取引に強制適用される制度で、中小企業も例外ではありません。特に横浜市内で複数法人を経営するオーナーは、親族の株式保有を含めた完全支配関係の判定を定期的に確認することが重要です。グループ内取引を行う前に専門家に相談することで、想定外の税務リスクを回避できます。



