相続税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に、現金で一括納付するのが原則です。しかし、横浜市内に自宅や賃貸不動産があり、財産の大半が土地や建物という方の場合、相続税を払うだけの現金が手元にないことも珍しくありません。本記事では、一括で納付できない場合に使える延納と物納の要件に加え、申告期限までに納税資金を確保する方法を税理士が解説します。

分割で払う「延納」の要件

延納は、相続税を最長20年の分割払いにできる制度です。利用するには、次の要件をすべて満たす必要があります。

  • 相続税額が10万円を超えていること
  • 金銭で一括納付することが困難な事由があり、その金額の範囲内であること
  • 延納税額と利子税に見合う担保を提供すること(延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下なら不要)
  • 申告期限までに延納申請書と担保提供関係書類を提出すること

注意したいのは「金銭納付が困難」の判定です。相続した現預金だけでなく、相続人がもともと持っている預貯金も判定の対象になります。相続人に十分な預金があれば、延納は認められません。また、判定では当面の生活費や事業の運転資金として必要な金額は差し引いて考えることができるため、申請書には必要な支出の見込みを具体的に記載することが大切です。

延納期間と利子税

延納できる期間と利子税の割合は、相続財産に占める不動産等の割合によって決まります。不動産等の割合が75%以上の場合、不動産等に対応する税額は最長20年の延納が可能で、利子税の本則割合は年3.6%です。

実際の利子税は、本則割合に「延納特例基準割合÷7.3%」を掛けた特例割合が適用されます。低金利の環境では、特例割合が年1%を下回る区分も多く、金融機関から借り入れるより負担が小さくなることがあります。一方で、担保として不動産に抵当権を設定する手続きなど、準備には時間がかかります。

延納の許可を受けた後も、毎年の分納期限までに、分納税額と利子税をあわせて納付していく必要があります。賃貸不動産の家賃収入を分納の原資とする場合は、空室や修繕費の発生も見込んだうえで、無理のない年数を選ぶことが大切です。なお、延納の途中で不動産を売却して資金ができた場合は、残りを繰り上げて一括で納めることもできます。

財産そのもので納める「物納」の要件

延納によっても金銭で納付することが難しい場合に限り、相続財産そのもので納める物納が認められます。物納できる財産には順位があり、第1順位は不動産や国債、上場株式などです。

ただし、抵当権が設定されている不動産や、境界が確定していない土地、借地権の設定をめぐる争いがある土地などは「管理処分不適格財産」として物納できません。また、物納の収納価額は相続税評価額が基準です。市場で売れば評価額より高く売れる土地を物納すると、かえって損をすることがあるため、売却と比較して判断する必要があります。なお、物納した財産には譲渡所得税がかかりません。物納を選ぶ場合は、測量や境界確定、書類の準備に時間がかかるため、申告期限までに間に合うよう早めに着手する必要があります。

独自視点|申告期限までに納税資金を用意する方法

延納や物納は審査が厳しく、手続きの負担も大きいため、実務ではまず申告期限までに現金を確保する方法を検討します。主な方法は次のとおりです。

  • 預貯金の払戻し制度:遺産分割の前でも、各相続人が一つの金融機関から一定額(上限150万円)を引き出せる
  • 死亡保険金・死亡退職金:受取人固有の財産として早期に受け取れ、それぞれ「500万円×法定相続人の数」まで非課税
  • 相続不動産の売却:申告期限の翌日から3年以内に売却すれば、支払った相続税の一部を取得費に加算できる
  • 金融機関からの借入れ:相続した不動産を担保に借り入れ、賃料収入で返済する

申告期限の10か月は、遺産分割の協議や財産評価を進めていると、あっという間に過ぎてしまいます。納税資金に不安がある場合は、相続が発生した早い段階で、いくら・いつまでに必要かを把握しておくことが大切です。

特に横浜市内の不動産を売却して納税資金にする場合、買主探しから決済までには数か月かかるのが一般的です。申告期限の直前に売り急ぐと、相場より安い価格で手放すことにもなりかねません。遺産分割の方針が固まり次第、どの財産を売るか、誰が相続するかをあわせて決め、早めに売却活動を始めることが、結果として手取りを増やすことにつながります。

まとめ

相続税は10か月以内の現金一括納付が原則ですが、一括で払えない場合は延納、それでも難しい場合は物納という選択肢があります。延納は相続人自身の預金も含めて判定され、物納は評価額での収納となるため、売却との比較が欠かせません。まずは預貯金の払戻し制度や保険金、不動産の売却などで納税資金を確保できないか検討しましょう。納税計画を含めた相続税申告は、相続税申告サービスへご相談ください。

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