「子どもや孫の名義で預金をしてきたから、相続財産には入らない」と考えている方は少なくありません。しかし、口座の名義が家族であっても、実質的に亡くなった方のお金であれば名義預金として相続財産に含まれます。名義預金は、相続税の税務調査で最も指摘が多い項目の一つです。本記事では、名義預金と判断される基準と、見落とされやすい配偶者名義の預金の扱い、生前にできる対策を税理士が解説します。

名義預金と判断される3つの基準

税務署が名義預金かどうかを判断する際には、主に次の3つの点を確認します。

  • お金の出どころ:預金の原資が亡くなった方の収入や財産であるか
  • 管理の実態:通帳・キャッシュカード・印鑑を誰が保管し、誰が入出金していたか
  • 贈与の成立:あげる側ともらう側の双方に、贈与の意思と認識があったか

特に重視されるのが「贈与の成立」です。贈与は、あげる人と、もらう人の双方の合意で成立する契約です。子どもが口座の存在を知らなかった場合や、通帳を親が持ったままで子どもが自由に使えなかった場合は、贈与が成立していないと判断され、名義預金として相続財産に戻されます。

税務署はどのように名義預金を見つけるのか

相続税の申告書が提出されると、税務署は金融機関に照会し、亡くなった方だけでなく相続人や孫の口座についても、過去の入出金を確認することがあります。調査でよく確認されるのは次のような点です。

  • 亡くなった方の口座から、家族の口座へ定期的な資金移動がないか
  • 家族名義の口座の届出印が、亡くなった方の口座と同じ印鑑ではないか
  • 口座の開設店舗や届出住所が、亡くなった方の自宅近くになっていないか
  • 家族の収入に比べて、名義預金の残高が不自然に多くないか

名義預金は、申告時に相続財産に含めていれば問題ありません。申告から漏れていた場合に、調査で指摘を受け、加算税や延滞税の対象になります。

さらに注意したいのが、家族が名義預金の存在を知りながら、意図的に申告から外していたと判断された場合です。この場合は、通常の過少申告加算税(10〜15%)ではなく、重加算税(35%)が課されることがあります。「子どもの口座だから申告しなくてよいと思った」という認識の違いであっても、通帳を相続人自身が保管していたなどの事情があると、隠蔽を疑われやすくなります。迷う口座は、申告前に税理士に相談し、判断の根拠を記録に残しておくことが大切です。

見落とされやすい「配偶者名義」の預金

名義預金というと子や孫の口座が注目されがちですが、実務で特に問題になりやすいのが専業主婦(主夫)の配偶者名義の預金です。夫の給与から生活費を受け取り、やりくりして貯めた「へそくり」は、夫婦の間であっても贈与の合意がなければ、原則として夫の財産と判断されます。

配偶者には相続税の配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分まで非課税)があるため、一次相続では税額に影響しないこともあります。しかし、申告漏れと指摘されれば加算税の対象になるほか、配偶者控除は申告しなければ適用されません。さらに、その預金は将来の二次相続で子どもにかかる相続税の計算にも影響します。「夫婦のお金だから」と区別せずにおくのではなく、原資がどちらの収入なのかを整理しておくことが大切です。

名義預金と判断されないための生前対策

家族に財産を移したい場合は、次のような方法で、贈与が成立したことを客観的に残しておきましょう。

  • 贈与のたびに贈与契約書を作成し、双方が署名する
  • 現金手渡しではなく、もらう人の口座へ振り込む
  • 通帳・カード・印鑑は、もらう人本人が管理する(届出印は別の印鑑にする)
  • 年110万円を超える贈与は、贈与税の申告をしておく

なお、「贈与税の時効(原則6年)が過ぎているから大丈夫」という考えは誤りです。名義預金は、そもそも贈与が成立していないと判断されるため、贈与税の時効とは関係なく、相続財産として課税されます。また、2024年以降の贈与は、相続開始前7年以内のものが相続財産に加算される点にも注意が必要です。

孫の教育資金として口座を作り、祖父母が通帳を管理しているケースも、名義預金になりやすい典型例です。教育費を援助したい場合は、必要なときに学校や塾へ直接支払う方法であれば、贈与税の対象外として扱われます。まとまった金額を先に渡したい場合は、教育資金の一括贈与の非課税制度など、要件が定められた制度の利用を検討しましょう。

まとめ

名義預金は、お金の出どころ、管理の実態、贈与の成立の3点から判断され、家族名義であっても実質が亡くなった方の財産であれば相続税の対象になります。配偶者名義のへそくりも原則として同じ扱いです。生前に財産を移すなら、贈与契約書と振込で記録を残し、もらう人本人が管理することが欠かせません。名義預金の判定を含めた相続税申告は、相続税申告サービスへご相談ください。

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