「うちの場合、相続税はいくらかかるのだろう」「そもそも相続税がかかるのかどうか分からない」という疑問を持つ方は少なくありません。相続税の計算は、財産の評価、基礎控除、税率、各種の特例や税額控除が順番に関係するため、一見複雑に見えますが、流れを押さえれば概算を出すことは難しくありません。

本記事では、相続税の計算方法を4つのステップに分けて解説し、配偶者と子が相続する場合の早見表、自宅や生命保険がある場合のシミュレーション、計算でよくある間違いまで、具体的な数字を使って紹介します。

結論:相続税は「課税価格→総額→各人の税額」の順に計算する

相続税の計算は、大きく次の流れで行います。

  • STEP1:相続財産から非課税財産や債務などを差し引き、「課税価格の合計額」を求める
  • STEP2:課税価格の合計額から基礎控除額を差し引き、「課税遺産総額」を求める
  • STEP3:課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定して税率を掛け、「相続税の総額」を求める
  • STEP4:相続税の総額を、実際に財産を取得した割合で各相続人に按分し、2割加算や税額控除を反映して各人の納税額を求める

ポイントは、実際の分け方に関係なく、まず「法定相続分で分けたと仮定して」相続税の総額を出すことです。これにより、遺産の分け方を変えても家族全体の相続税の総額は(特例の適用などを除き)変わらない仕組みになっています。

STEP1:課税価格の合計額を求める

課税価格は、次のように計算します。

課税価格=本来の相続財産+みなし相続財産−非課税財産−債務・葬式費用+生前贈与加算額

  • 本来の相続財産:預貯金、土地・建物、株式、投資信託など
  • みなし相続財産:被相続人が保険料を負担した死亡保険金、死亡退職金など
  • 非課税財産:死亡保険金・死亡退職金のうち、それぞれ「500万円×法定相続人の数」まで、墓地や仏壇など
  • 債務・葬式費用:借入金、未払いの医療費や税金、通夜・葬儀の費用など(香典返しや法要の費用は含みません)
  • 生前贈与加算:相続や遺贈で財産を取得した人が、相続開始前の一定期間内(2024年以降の贈与から段階的に7年へ延長)に受けた暦年贈与、相続時精算課税による贈与(年110万円の基礎控除部分を除く)

土地は原則として路線価などを基に評価し、建物は固定資産税評価額を基に評価します。自宅の土地などは、一定の要件を満たすと小規模宅地等の特例により評価額を最大80%減らすことができます。

STEP2:基礎控除を差し引いて課税遺産総額を求める

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。課税価格の合計額がこの金額以下であれば相続税はかからず、原則として申告も不要です。

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円

法定相続人の数の数え方(相続放棄をした人の扱いや養子の人数制限など)は、相続税の基礎控除の解説で詳しく説明しています。

STEP3:相続税の総額を求める(速算表)

課税遺産総額を法定相続分で分け、それぞれの金額に次の速算表を当てはめて税額を出し、合計したものが相続税の総額です。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%−
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

法定相続分は、配偶者と子が相続人なら配偶者2分の1・子全員で2分の1、配偶者と父母なら配偶者3分の2・父母全員で3分の1、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者4分の3・兄弟姉妹全員で4分の1です。

STEP4:各人の納税額を求める

相続税の総額を、各人が実際に取得した課税価格の割合で按分します。そのうえで、次のような加算・控除を反映します。

  • 相続税額の2割加算:配偶者と1親等の血族(子・父母)以外の人(兄弟姉妹、代襲相続人ではない孫など)は、税額が2割増しになります
  • 配偶者の税額軽減:配偶者の取得分は1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い額まで税額がかかりません(申告が必要)
  • 未成年者控除:相続人が18歳未満の場合、18歳になるまでの年数×10万円
  • 障害者控除:相続人が障害者の場合、85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者は20万円)
  • 相次相続控除:10年以内に続けて相続があった場合の調整
  • 贈与税額控除:生前贈与加算した贈与について納めた贈与税

シミュレーション1:遺産8,000万円、配偶者と子2人の場合

正味の遺産(課税価格の合計)が8,000万円で、配偶者が4,000万円、子2人がそれぞれ2,000万円を取得するケースです。

手順計算金額
基礎控除額3,000万円+600万円×3人4,800万円
課税遺産総額8,000万円−4,800万円3,200万円
配偶者の法定相続分(1/2)1,600万円×15%−50万円190万円
子1人の法定相続分(1/4)800万円×10%80万円×2人
相続税の総額190万円+80万円+80万円350万円
配偶者の按分税額350万円×4,000万円÷8,000万円175万円→税額軽減で0円
子1人の納税額350万円×2,000万円÷8,000万円87.5万円

家族全体の納税額は、子2人分の175万円となります(端数処理は省略しています)。

シミュレーション2:自宅と生命保険がある場合

相続人は配偶者と子2人。財産は自宅の土地(評価額5,000万円、面積330㎡以下)、自宅建物1,000万円、預金6,000万円、死亡保険金2,000万円(子2人が1,000万円ずつ受取り)、債務・葬式費用300万円とします。配偶者が自宅を取得し、小規模宅地等の特例を適用するケースです。

項目特例・非課税枠を使わない場合特例・非課税枠を使った場合
自宅の土地5,000万円1,000万円(80%減額)
自宅建物1,000万円1,000万円
預金6,000万円6,000万円
死亡保険金2,000万円500万円(1,500万円非課税)
債務・葬式費用−300万円−300万円
課税価格の合計1億3,700万円8,200万円
相続税の総額約1,258万円375万円

小規模宅地等の特例と生命保険金の非課税枠によって、課税価格は5,500万円、相続税の総額は約880万円小さくなります。特例を使った場合で、配偶者が自宅と預金2,000万円(債務・葬式費用を負担)、子がそれぞれ預金2,000万円と保険金を取得すると、配偶者の税額は税額軽減で0円、子の納税額は1人あたり約103万円となります。

相続税の早見表

配偶者と子が相続人の場合(配偶者が法定相続分を取得し税額軽減を適用)と、子のみが相続人の場合の、相続税の納税額の合計の目安です。課税価格の合計額に対する概算で、各種特例や税額控除は考慮していません。

課税価格の合計配偶者+子1人配偶者+子2人配偶者+子3人子1人子2人子3人
5,000万円40万円10万円0円160万円80万円20万円
8,000万円235万円175万円138万円680万円470万円330万円
1億円385万円315万円263万円1,220万円770万円630万円
1億5,000万円920万円748万円665万円2,860万円1,840万円1,440万円
2億円1,670万円1,350万円1,218万円4,860万円3,340万円2,460万円
3億円3,460万円2,860万円2,540万円9,180万円6,920万円5,460万円

配偶者がいる場合の金額は一次相続のみのものです。配偶者が取得した財産は将来の二次相続で課税されるため、二次相続まで含めた検討は配偶者の税額軽減と二次相続の解説をご参照ください。

計算でよくある間違い・注意点

  • 預金残高だけで判断する:土地・建物、株式、死亡保険金、名義預金(家族名義でも実質的に被相続人の財産である預金)なども相続財産です。財産を漏れなく洗い出すことが出発点になります。
  • 土地を時価や固定資産税評価額で計算する:土地は路線価方式または倍率方式で評価するのが原則で、形状や利用状況による補正もあります。評価の仕方で税額が大きく変わる部分です。
  • 特例を使えば申告は不要と考える:小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、適用した結果税額がゼロになっても申告が必要です。
  • 生前贈与を計算に入れ忘れる:相続前の一定期間内の暦年贈与や相続時精算課税の贈与は課税価格に加算されます。
  • 申告期限を意識していない:申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。納付は原則として金銭一括で、一定の要件のもとで延納や物納の制度があります。

よくある質問

Q. 相続税がかかるかどうかを簡単に判断する方法はありますか?

財産の合計(死亡保険金などを含み、債務・葬式費用を差し引いた額)が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるかどうかが一つの目安です。ただし、土地の評価額によって結果が変わるため、不動産がある場合は路線価などを基に評価してみる必要があります。

Q. 早見表の金額と実際の税額が違うのはなぜですか?

早見表は法定相続分どおりに分けた場合の概算で、小規模宅地等の特例や生命保険金の非課税枠、2割加算、未成年者控除などは反映していません。実際の分け方や財産の内容によって税額は変わります。

Q. 遺産の分け方を変えると相続税の総額は変わりますか?

相続税の総額は法定相続分で計算するため、分け方を変えても原則として変わりません。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は誰が取得するかで適用が変わるため、家族全体の納税額は分け方によって変わります。

Q. 相続税の申告は自分でもできますか?

ご自身で申告することも可能です。ただ、土地の評価や特例の要件判定、二次相続を見据えた分け方の検討には専門知識が必要になる場面が多くあります。税理士に依頼する場合の考え方は相続税申告を横浜の税理士に依頼するメリットでも紹介しています。

まとめ

相続税は、課税価格の合計額を求め、基礎控除を差し引き、法定相続分で分けた場合の税額を合計して総額を出し、実際の取得割合で按分するという流れで計算します。小規模宅地等の特例や生命保険金の非課税枠、配偶者の税額軽減などをどう使うかで、納税額は大きく変わります。

税理士法人横浜キャピタル税務事務所(横浜市西区浅間町、横浜駅徒歩圏)では、相続税がかかるかどうかの概算から申告までご相談をお受けしています。遺産分割など法律面の問題は、同一グループの弁護士法人横浜キャピタル法律事務所と連携して対応します。相談料は料金案内ページをご覧ください。ご相談は対面・オンライン(Zoom等)に対応しています。

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