会社設立にあたって多くの方が悩むのが「資本金をいくらにするか」です。現在は資本金1円でも会社を設立できますが、税務・消費税・対外的な信用など複数の観点から見ると、最適額には一定の目安があります。損をしない資本金の決め方を税理士が解説します。
資本金の下限・上限と一般的な相場
会社法上、資本金の下限は1円、上限は定められていません。ただし実務では、当面の運転資金(3〜6か月分)を目安にするのが一般的です。設立直後は売上が安定しないことも多く、資本金が薄すぎるとすぐに資金繰りに窮します。中小企業では100万円〜900万円程度で設定するケースが多く見られます。
消費税の免税事業者になれる1,000万円の壁
資本金を決めるうえで最も重要なのが消費税です。原則として、資本金1,000万円未満で設立した法人は、第1期(および一定要件を満たせば第2期)の消費税が免税になります。資本金1,000万円以上で設立すると、初年度から消費税の納税義務が生じます。
ただし、2023年開始のインボイス制度により、取引先が仕入税額控除を求める場合は、免税事業者のままだと取引に影響が出ることがあります。あえて課税事業者を選択(インボイス登録)するケースもあるため、「免税メリット」と「インボイス対応」の両にらみで判断する必要があります。なお第1期でも、特定期間(前事業年度開始から6か月間)の課税売上高と給与支払額がいずれも1,000万円を超えると課税事業者になる点にも注意が必要です。
税務・行政上の1,000万円・1億円の壁
資本金の額は消費税以外にも複数の税制で影響します。
①法人住民税の均等割:資本金等の額が大きいほど均等割(赤字でも必ずかかる税額)が上がります。資本金1,000万円以下と、1,000万円超では均等割の区分が変わります。②外形標準課税:資本金1億円超の法人は、所得に関係なく事業規模で課税される外形標準課税の対象になります。③中小企業の各種特例:資本金1億円以下であれば、法人税の軽減税率、少額減価償却資産の特例、交際費の損金算入枠など、中小企業向けの優遇を受けられます。資本金1億円は「中小企業でいられるかどうか」の重要なラインです。
信用・許認可の観点から見た資本金
資本金は登記事項として誰でも閲覧でき、会社の体力を示す一つの指標として見られます。極端に少額だと、金融機関の融資審査や取引先との与信で不利になることがあります。また、建設業・人材派遣業・旅行業など、一定の資本金や純資産が許認可の要件になっている業種もあります。自社が取得予定の許認可に資本金要件がないか、設立前に確認しておきましょう。
なお、手元資金の全額を資本金にする必要はありません。出資額の一部を「資本準備金」に振り分ければ、資本金の額を抑えつつ会社に資金を入れられます。均等割や外形標準課税の判定は原則として資本金と資本準備金の合計(資本金等の額)で見られる点には注意が必要ですが、登記上の資本金を低く見せたい場合の選択肢になります。設立後に事業が拡大して信用力を高めたくなったら、増資で資本金を積み増すことも可能です。まずは無理のない範囲で設定し、成長に合わせて見直す発想が現実的です。
まとめ
資本金は「当面の運転資金3〜6か月分」を基本に、消費税の免税を活かすなら1,000万円未満、中小企業の優遇を受けるなら1億円以下に収めるのが基本方針です。インボイス対応や許認可要件も踏まえて総合的に判断する必要があります。設立時の資本金設定に迷われた際は、法人設立サポートへお問い合わせください。



